脂漏性脱毛症は一度発症すると完治が難しい場合もありますが、日頃からの予防と適切な対策によって症状の悪化を防ぎ、健康な頭皮環境を維持することができます。最も重要な予防策の一つは、頭皮を清潔に保つことです。しかし、清潔に保つといっても、強力な洗浄力のシャンプーで洗いすぎたり、頻繁に洗髪しすぎたりするのは逆効果になることがあります。頭皮に必要な皮脂まで洗い流してしまい、かえって皮脂の過剰分泌を引き起こす可能性があるためです。頭皮に優しいアミノ酸系のシャンプーや、抗真菌成分が配合された薬用シャンプーを選び、毎日、または一日おきに優しく洗髪することが推奨されます。シャンプーの際は、指の腹で頭皮をマッサージするように洗い、十分にすすぐことを心がけましょう。シャンプーやリンスのすすぎ残しは、毛穴を詰まらせ、頭皮環境を悪化させる原因となります。また、食生活の改善も予防には不可欠です。高脂肪、高糖質な食事は避け、ビタミンB群を豊富に含む食品(レバー、卵、納豆など)や、野菜、果物をバランス良く摂取しましょう。ストレスを溜めない生活も大切です。適度な運動や十分な睡眠を取り、心身のリラックスを心がけることで、ホルモンバランスの乱れを防ぎ、皮脂の過剰分泌を抑えることができます。脂漏性脱毛症の治療は長らく、抗真菌剤やステロイド剤の外用薬が主流でしたが、近年ではその原因やメカニズムの解明が進むにつれて、より効果的で副作用の少ない治療法が研究・開発されています。特に注目されているのは、頭皮マイクロバイオーム(微生物叢)のバランスを整えるアプローチです。脂漏性脱毛症の原因菌であるマラセチア菌は頭皮の常在菌ですが、その異常増殖が問題となるため、単に菌を殺すだけでなく、頭皮に存在する他の善玉菌とのバランスを保つことが重要視されています。これに基づき、プロバイオティクスやプレバイオティクスを応用したシャンプーや頭皮ケア製品が開発され、臨床試験が進められています。また、光線療法も選択肢の一つとして注目されています。特定の波長の光を頭皮に当てることで、炎症を抑えたり、毛母細胞を活性化させたりする効果が期待されています。さらに、遺伝子レベルでのアプローチや、幹細胞を用いた再生医療の研究も進められており、将来的にはより根本的な治療法が登場する可能性を秘めています。
脂漏性脱毛症の予防と対策