プラセンタが育毛に良いという話はよく耳にしますが、その効果は一体どこまで科学的に裏付けられているのでしょうか。プラセンタには成長因子や豊富なアミノ酸が含まれており、これらが毛髪の成長に好影響を与える可能性は示唆されています。しかし、実際のところ、プラセンタの育毛効果に関する研究はどのような段階にあり、どのような知見が得られているのか、現状を整理してみましょう。プラセンタに含まれる成長因子、例えばFGF(線維芽細胞成長因子)やKGF(ケラチノサイト成長因子)、IGF(インスリン様成長因子)などが、毛母細胞の増殖を促進したり、毛周期における成長期を延長したりする働きを持つことは、基礎研究レベルでは報告されています。動物実験や培養細胞を用いた研究では、これらの成長因子が毛包の活性化に寄与する可能性が示唆されています。これらの知見は、プラセンタが育毛に役立つかもしれないという期待の根拠の一つとなっています。また、プラセンタエキスそのものを用いた研究も行われています。一部の研究では、プラセンタエキスをマウスに塗布したところ、毛の成長が促進されたという報告や、ヒトの毛乳頭細胞を用いた実験で、プラセンタエキスが細胞増殖を促したという結果が得られています。これらの研究は、プラセンタが直接的に毛髪の成長に関わる細胞に働きかける可能性を示唆しています。しかしながら、ヒトを対象とした大規模で質の高い臨床試験(ランダム化比較試験など)によって、プラセンタの育毛効果が明確に証明されているかというと、まだ十分とは言えないのが現状です。小規模な臨床研究や症例報告レベルでは、プラセンタの使用によって抜け毛の減少や髪質の改善が見られたという報告もありますが、プラセボ効果(偽薬効果)の可能性を排除しきれなかったり、対象者数が少なかったりするため、その結果を一般化するには限界があります。さらに、プラセンタと一口に言っても、その由来(豚、馬、ヒトなど)、抽出方法、製品形態(サプリメント、注射、外用剤など)によって、含まれる成分や濃度、そして体内での吸収率や作用機序も異なります。そのため、ある特定のプラセンタ製品で効果が見られたとしても、それが全てのプラセンタ製品に当てはまるとは限りません。