薄毛や抜け毛の悩みを抱えるとき、多くの人は髪の毛そのものの変化に注目しがちです。しかし、実は「頭皮の状態」も、はげの始まりを示す重要なサインを発していることがあります。健康な髪は健康な頭皮という土壌から育ちます。頭皮に何らかのトラブルが現れたら、それは毛髪の成長環境が悪化している危険信号であり、放置すれば薄毛の進行に繋がる可能性があるのです。具体的にどのような頭皮トラブルが、はげ始めのサインとなり得るのでしょうか。まず、「頭皮の過剰な皮脂分泌」です。頭皮が常に脂っぽく、ベタついている状態は、毛穴詰まりを引き起こしやすくなります。毛穴が詰まると、毛髪の正常な成長が妨げられたり、炎症が起きたりする可能性があります。また、過剰な皮脂は、マラセチア菌などの常在菌の異常繁殖を招き、脂漏性皮膚炎の原因となることもあります。脂漏性皮膚炎は、かゆみやフケ、炎症を伴い、抜け毛を悪化させる要因の一つです。逆に、「頭皮の乾燥」も問題です。頭皮が乾燥すると、バリア機能が低下し、外部からの刺激に弱くなります。その結果、かゆみやフケ(特に乾燥性の細かいフケ)が発生しやすくなります。頭皮を掻きむしってしまうと、さらに炎症が悪化し、毛根にダメージを与えてしまうこともあります。「頭皮のかゆみや赤み、炎症」は、明らかなトラブルのサインです。これらは、シャンプーが合わない、アレルギー反応、細菌や真菌の感染、あるいは前述の脂漏性皮膚炎や乾燥などが原因で起こります。炎症が続くと、毛母細胞の働きが低下し、健康な髪の育成が困難になります。「フケの増加」も注意が必要です。フケには、乾燥によるパラパラとした乾性フケと、皮脂の過剰分泌によるベタベタとした湿性フケがあります。どちらのタイプのフケも、頭皮環境が悪化しているサインであり、放置すると抜け毛に繋がる可能性があります。また、「頭皮が硬くなる」というのも見逃せないサインです。健康な頭皮はある程度の弾力がありますが、血行が悪くなると頭皮が硬くなり、毛根への栄養供給が滞りがちになります。ストレスや肩こりなども頭皮の血行不良を引き起こす原因となります。
月: 2022年9月
注入治療(メソセラピー)の成分と方法
AGA(男性型脱毛症)治療において、より積極的な効果を求める場合に選択肢となるのが「注入治療(メソセラピー)」です。これは、発毛効果のある有効成分を、注射や特殊な機器を用いて頭皮に直接注入する治療法で、内服薬や外用薬だけでは効果が不十分な場合や、より早期の効果を期待する場合に検討されます。注入治療で用いられる成分や注入方法にはいくつかの種類があり、それぞれ特徴や期待できる効果、費用などが異なります。まず、「注入される成分」の比較です。代表的な成分としては、「成長因子(グロースファクター)」が挙げられます。これは、毛母細胞の増殖や分裂を促進し、ヘアサイクルを正常化する働きを持つタンパク質の一種です。KGF(ケラチノサイト成長因子)、IGF(インスリン様成長因子)、VEGF(血管内皮細胞増殖因子)など、様々な種類の成長因子があり、これらを組み合わせたカクテルが用いられることが多いです。また、「ミノキシジル」を直接注入する方法もあります。外用薬として塗布するよりも、直接頭皮の深部に届けることで、より高い効果が期待できるとされています。その他、ビタミンやアミノ酸、ヒアルロン酸といった、頭皮環境を整えたり、毛髪の成長をサポートしたりする成分が配合されることもあります。次に、「注入方法」の比較です。最も一般的なのは「注射器を用いた手打ち」です。医師が手作業で、細い針を使って頭皮に直接薬剤を注入します。注入する深さや量を細かく調整できるというメリットがあります。また、「ダーマペン」や「ダーマローラー」といった微細な針がたくさんついた器具を用いて、頭皮に微小な穴を開けながら薬剤を浸透させる方法や、「エレクトロポレーション(電気穿孔法)」や「ノーニードルメソセラピー」といった、針を使わずに電気の力や超音波などで薬剤を導入する方法もあります。これらは痛みが少ないというメリットがあります。注入治療は、一般的に複数回の施術が必要となり、費用も内服薬や外用薬に比べて高額になる傾向があります。効果や副作用、費用などを総合的に比較し、医師とよく相談した上で、自分に適した方法を選択することが重要です。