男性型脱毛症、通称AGAの治療薬として広く知られるフィナステリド。この薬剤は、AGAの進行を抑制する効果が期待され、多くの男性の薄毛治療に用いられています。フィナステリドは、ミノキシジルと並んでAGA治療の二大柱とも言える存在ですが、しばしば「フィナステリドのみ」での治療、つまり単独療法が選択されることがあります。この記事では、フィナステリド単独治療に関する基本的な知識、その作用機序や効果、そしてどのような場合に選択されるのかについて解説します。まず、フィナステリドがどのようにAGAに作用するのかを理解することが重要です。AGAの主な原因の一つは、男性ホルモンであるテストステロンが、5αリダクターゼという酵素の働きによって、より強力なジヒドロテストステロン(DHT)に変換されることです。このDHTが毛乳頭細胞にある男性ホルモン受容体と結合すると、毛髪の成長期が短縮され、毛が細く弱々しくなり、最終的には抜け落ちてしまいます。フィナステリドは、この5αリダクターゼの働きを阻害することで、DHTの生成を抑制します。その結果、毛髪の成長期が正常な長さに近づき、抜け毛の減少や毛髪の太さの改善が期待できるのです。フィナステリド単独治療は、主にAGAの進行を遅らせる、現状を維持することを目的として選択されることが多いです。特に、AGAの初期段階で、まだ毛髪の量が比較的保たれているものの、抜け毛が増えてきた、髪が細くなってきたと感じる場合に有効な選択肢となり得ます。また、ミノキシジルのような発毛を促進する薬剤との併用ではなく、まずは一つの薬剤で様子を見たいという場合や、ミノキシジルが体質に合わない、あるいは副作用が気になるという場合にも、フィナステリド単独での治療が検討されます。フィナステリドの効果の現れ方には個人差がありますが、一般的には服用を開始してから効果を実感するまでに3ヶ月から6ヶ月程度の期間が必要とされています。早い人では抜け毛の減少を数ヶ月で感じることもありますが、多くの場合、毛髪の太さや密度の改善を実感するには、より長期的な服用が必要となります。
月: 2023年1月
フィナステリド単独治療。副作用とリスク管理
フィナステリドは男性型脱毛症(AGA)治療において有効な薬剤ですが、医薬品である以上、副作用のリスクも存在します。フィナステリド単独療法を選択する場合、どのような副作用が起こり得るのか、そしてそのリスクをどのように管理していけばよいのかを事前に理解しておくことは、安心して治療を継続するために非常に重要です。フィナステリドの副作用として比較的報告が多いのは、性機能に関するものです。具体的には、性欲減退、勃起機能不全(ED)、射精障害(精液量の減少など)などが挙げられます。これらの副作用の発生頻度は、臨床試験では数パーセント程度と報告されており、決して高いものではありません。また、これらの副作用は、服用を中止すれば多くの場合改善するとされています。しかし、ごく稀に服用中止後も症状が持続するケース(ポストフィナステリドシンドローム:PFS)も報告されており、この点については注意が必要です。その他に起こり得る副作用としては、肝機能障害があります。フィナステリドは肝臓で代謝されるため、元々肝機能が低下している方や、他の薬剤との併用によっては、肝臓に負担がかかる可能性があります。そのため、治療開始前や治療中に定期的な血液検査を行い、肝機能の値を確認することが推奨されます。また、稀に抑うつ気分、乳房の圧痛や肥大といった症状が報告されることもあります。これらの副作用のリスクを管理するためには、まず第一に、医師の指導のもとで正しく服用することが最も重要です。自己判断で用量を変えたり、個人輸入などで安易に入手した薬剤を使用したりすることは、予期せぬ副作用のリスクを高める可能性があります。必ず医療機関を受診し、医師の診察を受けた上で処方してもらいましょう。治療開始前に、既往歴や現在服用中の薬剤について正確に医師に伝えることも大切です。これにより、副作用のリスクを事前に評価し、適切な対策を講じることができます。治療開始後は、定期的な診察を受け、体調の変化や気になる症状があれば速やかに医師に相談することが重要です。特に、性機能に関する変化や気分の落ち込みなど、デリケートな問題であっても、遠慮せずに伝えることが早期発見・早期対応に繋がります。