数年前から、ふと鏡を見ると分け目が以前より目立つようになったと感じ始めました。最初は気のせいか、あるいは髪型を変えたせいかと思っていましたが、日が経つにつれて、髪全体のボリュームが減り、地肌が透けて見える範囲が広がってきたように感じました。美容師さんにも「少し髪が細くなりましたね」と指摘され、これはただ事ではないと、大きなショックと不安に襲われたのを覚えています。インターネットで調べてみると、私の症状は「びまん性脱毛症」というものに当てはまるようでした。びまん性脱毛症という言葉を知ってからは、とにかく情報を集めました。原因はホルモンバランスの乱れ、ストレス、栄養不足など様々で、どれも自分に当てはまるような気がして、余計に落ち込んでしまいました。特に仕事が忙しく、不規則な生活が続いていた時期だったこともあり、それが原因なのではないかと自分を責める気持ちもありました。まず取り組んだのは、生活習慣の見直しです。できるだけバランスの取れた食事を心がけ、特に髪に良いとされるタンパク質や亜鉛、鉄分を意識して摂取するようにしました。睡眠時間も確保し、寝る前はスマートフォンを触る時間を減らしてリラックスするよう努めました。シャンプーも、頭皮に優しいアミノ酸系のものに変え、洗い方にも気を使うようになりました。しかし、すぐに効果が現れるわけではありません。毎日鏡を見てはため息をつき、抜け毛の量に一喜一憂する日々が続きました。友人との会話でも、つい髪の毛の話題を避けてしまったり、帽子が手放せなくなったりと、精神的にもかなり参っていました。周りの人は気づいていないかもしれないけれど、自分にとっては大きなコンプレックスでした。そんな中、皮膚科の医師に相談する勇気が出ました。医師は私の話をじっくりと聞いてくれ、びまん性脱毛症のメカニズムや、考えられる原因について丁寧に説明してくれました。そして、「焦らず、できることから一つずつ改善していきましょう」という言葉に、少しだけ心が軽くなったのを覚えています。医師の指導のもと、栄養指導を受けたり、場合によっては内服薬や外用薬を検討したりすることも視野に入れました。