AGA(男性型脱毛症)は進行性の脱毛症であるため、その初期症状を見逃さずに早期に対策を始めることが、進行を遅らせ、より良い治療効果を得るために非常に重要です。しかし、初期症状はわずかな変化であることが多く、気づきにくい場合もあります。ここでは、AGAの初期症状として注意すべきポイントを解説します。まず、「抜け毛の増加」です。シャンプー時やブラッシング時、朝起きた時の枕などに付着する抜け毛の量が、以前よりも明らかに増えたと感じる場合は注意が必要です。ただし、1日に50本から100本程度の抜け毛は正常なヘアサイクルの一部なので、過度に神経質になる必要はありませんが、持続的に増えている場合はAGAのサインかもしれません。次に、「髪質の変化」です。以前は太くしっかりしていた髪の毛が、細く、弱々しく、ハリやコシがなくなってきたと感じる場合、それはAGAによって毛髪が十分に成長できなくなっている(軟毛化)兆候かもしれません。特に、細くて短い抜け毛が増えてきたら要注意です。また、「生え際の後退」も代表的な初期症状です。こめかみ部分(M字部分)が少しずつ後退してきたり、おでこが広くなったように感じたりする場合は、AGAが進行し始めている可能性があります。鏡で定期的にチェックしたり、昔の写真と比較したりすると変化に気づきやすいでしょう。「頭頂部の透け感」も初期症状の一つです。つむじ周りの髪の毛が薄くなり、地肌が以前よりも透けて見えるようになってきたら、AGAが頭頂部から進行している可能性があります。合わせ鏡を使ったり、家族に見てもらったりして確認しましょう。「頭皮のかゆみやフケ」も、AGAの直接的な症状ではありませんが、頭皮環境が悪化しているサインであり、AGAを助長する可能性があります。これらの初期症状は、一つだけでなく複数同時に現れることもあります。些細な変化でも、「いつもと違うな」と感じたら、自己判断せずに皮膚科やAGA専門クリニックを受診し、専門医の診断を受けることを強くお勧めします。早期発見・早期治療が、AGAと上手く付き合っていくための鍵となります。
月: 2021年5月
自毛植毛のFUT法とFUE法
AGA(男性型脱毛症)の進行が進み、内服薬や外用薬だけでは満足のいく効果が得られない場合や、より根本的な解決を求める場合に検討されるのが「自毛植毛」です。これは、後頭部や側頭部などAGAの影響を受けにくい部位から自身の毛髪(毛包ごと)を採取し、薄毛の気になる箇所に移植する外科的な治療法です。自毛植毛の主な手術方法には、「FUT法(Follicular Unit Transplantation、ストリップ法とも呼ばれる)」と「FUE法(Follicular Unit Extraction)」の2種類があり、それぞれメリット・デメリットが異なります。まず、「FUT法」は、後頭部の頭皮を帯状にメスで切除し、その頭皮片から毛包(グラフト)を株分けして採取する方法です。一度に大量のグラフトを採取できるため、広範囲の薄毛に対応しやすいというメリットがあります。また、毛包の切断率が比較的低く、質の高いグラフトを得やすいとされています。デメリットとしては、頭皮を切除するため、線状の傷跡が残ること、術後の痛みや腫れがFUE法に比べてやや大きい傾向があることなどが挙げられます。次に、「FUE法」は、専用の微細なパンチ(直径0.6mm~1.0mm程度)を用いて、毛包単位で一つ一つ頭皮から直接採取する方法です。メスを使わないため、線状の傷跡が残らず、点状の小さな傷跡になるため目立ちにくいというメリットがあります。また、術後の痛みやダウンタイムがFUT法に比べて短い傾向があります。デメリットとしては、一度に採取できるグラフトの数に限界があるため、広範囲の植毛には複数回の手術が必要になる場合があること、毛包の切断率がFUT法に比べてやや高くなる可能性があること、FUT法に比べて費用が高くなる傾向があることなどが挙げられます。どちらの方法を選択するかは、薄毛の範囲や進行度、患者さんの希望(傷跡の目立ちにくさ、ダウンタイムの短さなど)、予算、そしてクリニックの技術力などを総合的に考慮して、医師と十分に相談した上で決定することが重要です。それぞれの方法の特性を理解し、自分に最適な選択をすることが、満足のいく結果を得るための鍵となります。