女性の味方?びまん性脱毛症と漢方薬

びまん性脱毛症に悩む女性の中には、西洋医学的な治療法だけでなく、東洋医学的なアプローチである漢方薬に関心を持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。漢方薬は、体全体のバランスを整えることで、間接的に髪の健康を取り戻そうとする考え方に基づいています。特定の症状だけを抑えるのではなく、体質改善を目指す点が特徴です。では、びまん性脱毛症に対して、漢方薬はどのような役割を果たし、どのような効果が期待できるのでしょうか。漢方の考え方では、髪の毛は「血余(けつよ)」、つまり血液の余りであるとされています。そのため、血液の質や量が不足したり、血行が悪くなったりすると、髪に十分な栄養が行き渡らず、薄毛や抜け毛、白髪といったトラブルが起こりやすくなると考えます。また、「腎(じん)」は生命エネルギーや成長、老化に関わる臓器とされ、腎の機能が低下すると髪にも影響が出るとされています。びまん性脱毛症の女性に対して用いられる漢方薬は、個々の体質や症状(「証」といいます)に合わせて処方されます。例えば、血行不良や血の不足(血虚:けっきょ)が見られる場合には、「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」や「四物湯(しもつとう)」、「婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)」などが用いられることがあります。これらは血行を促進し、血液を補うことで、頭皮に栄養を届けやすくする効果が期待されます。ストレスが強く、気の巡りが滞っている(気滞:きたい)場合には、「加味逍遙散(かみしょうようさん)」や「抑肝散(よくかんさん)」などが処方されることがあります。これらは自律神経のバランスを整え、精神的な緊張を和らげることで、ストレスによる血行不良やホルモンバランスの乱れを改善するのに役立つと考えられます。加齢などにより腎の機能が低下している(腎虚:じんきょ)場合には、「八味地黄丸(はちみじおうがん)」や「杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)」などが用いられることがあります。これらは腎の働きを高め、生命エネルギーを補うことで、老化に伴う髪のトラブルの改善をサポートするとされています。漢方薬のメリットとしては、副作用が比較的少ないとされること、体質改善を目指すため、髪以外の不調(冷え性、肩こり、生理不順など)も同時に改善する可能性があることなどが挙げられます。