AGA(男性型脱毛症)の進行が進み、内服薬や外用薬だけでは満足のいく効果が得られない場合や、より根本的な解決を求める場合に検討されるのが「自毛植毛」です。これは、後頭部や側頭部などAGAの影響を受けにくい部位から自身の毛髪(毛包ごと)を採取し、薄毛の気になる箇所に移植する外科的な治療法です。自毛植毛の主な手術方法には、「FUT法(Follicular Unit Transplantation、ストリップ法とも呼ばれる)」と「FUE法(Follicular Unit Extraction)」の2種類があり、それぞれメリット・デメリットが異なります。まず、「FUT法」は、後頭部の頭皮を帯状にメスで切除し、その頭皮片から毛包(グラフト)を株分けして採取する方法です。一度に大量のグラフトを採取できるため、広範囲の薄毛に対応しやすいというメリットがあります。また、毛包の切断率が比較的低く、質の高いグラフトを得やすいとされています。デメリットとしては、頭皮を切除するため、線状の傷跡が残ること、術後の痛みや腫れがFUE法に比べてやや大きい傾向があることなどが挙げられます。次に、「FUE法」は、専用の微細なパンチ(直径0.6mm~1.0mm程度)を用いて、毛包単位で一つ一つ頭皮から直接採取する方法です。メスを使わないため、線状の傷跡が残らず、点状の小さな傷跡になるため目立ちにくいというメリットがあります。また、術後の痛みやダウンタイムがFUT法に比べて短い傾向があります。デメリットとしては、一度に採取できるグラフトの数に限界があるため、広範囲の植毛には複数回の手術が必要になる場合があること、毛包の切断率がFUT法に比べてやや高くなる可能性があること、FUT法に比べて費用が高くなる傾向があることなどが挙げられます。どちらの方法を選択するかは、薄毛の範囲や進行度、患者さんの希望(傷跡の目立ちにくさ、ダウンタイムの短さなど)、予算、そしてクリニックの技術力などを総合的に考慮して、医師と十分に相談した上で決定することが重要です。それぞれの方法の特性を理解し、自分に最適な選択をすることが、満足のいく結果を得るための鍵となります。